ラ・モントルの手記

自由に、繋いで、美化しよう!

涙と一緒に詰め込んだウォーアイニーの行方

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線路沿い  一人歩いている夜道の街灯に影が二つ

君の亡霊だ   きっとそうなら嬉しいな

EXOの末っ子、セフンが4月12日に24歳の誕生日を迎えた。私が初めてセフンという存在を知った時彼はまだ高校生で、黄色の制服が似合うふにゃふにゃした笑顔が印象的な可愛らしい少年だった。そんな彼がグループを支える頼もしい存在になって久しい。まだ本当の意味で何も知らない"子供"だった頃、この世界の壁にぶち当たった。きっと色々なことを学んだ。人と人の間に絶対は存在しないということ、交わす言葉や繋いだ手の温かさだけで愛をはかることはできないということ。

彼はこう言う。「僕達EXOは、ずっと続いていかなきゃいけないんです」迷いの中でふと溢れた本音。時が経ち、その決意を負った少年はいつしか強く聡い男へと成長を遂げていた。今日はそんなセフンと私の推しであるレイさんとのエピソードをいくつか厳選して紹介しようと思う。

 

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まずこのグラサン兄弟についてだが、年はレイさんの方が3つ上である。(レイさん1991年生まれ、セフン1994年生まれ) グループの中ではそれぞれメインダンサー、リードダンサーという肩書きを持ち、コンサートのリハではポジション確認やペアの振り合わせ等でよく隣にいるところを目にする。韓国は日本よりも上下関係が厳しい。これはどのグループにおいても99.9%言えることだが、自分より年上の人は「〜ヒョン(兄さん)」と呼ぶし、敬語を使う。そんな中、この2人はあまりこのルールにハマっていない、寧ろ「敢えてそうしていない」そんな風に感じているのはきっと私だけではないと思う。

 

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変わらないと思ってた

そんなものあるわけなかった

昔、EXOがまだ12人だった頃の出来事だ。海外で行われるイベントに向け空港に到着した彼らは、先に代理で搭乗手続きを済ませていたマネージャーからそれぞれパスポートを受け取った。その際、末っ子であるセフンが率先して兄達の名前を呼んで渡していたのだが、レイさんのことを彼は「イーシン」と呼んだ。確かこの時ジョンインをカイと呼び、ギョンスをディオヒョンと呼んでいたのでどうしてレイさんだけ…と私は密かに違和感を覚えていた。

 

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離れない人に泣いたりしない

壊れない物に泣いたりしない

EXOが単体で出演した初めての連続番組、気付けばレイさんとセフンは自然とくっついていた。ファンサービスなのかと錯覚するくらい際どいものもあったけれど、彼らが作り出す"ゆるい"雰囲気は不思議と好感が持てた。一番印象に残ったのはご飯のシーンだ。肉や野菜をあまりにも適当な手さばきでドバドバ鍋に入れていくレイさんの隣で、箸を持ったままその鍋をじっと見つめるセフンはなんとも言えない表情をしていた。また、同番組でメンバー全員でプチ旅行をすることになり、どこかしらのフードコートでレイさんが一人で食事していた時のことだ。それをいち早く見つけたセフンがビデオカメラを持ったまま駆け寄ってきてこう言った。「どうして一人で食べてるの兄さん」さっき別にご飯を食べたけどお腹いっぱいにならなかったからまた注文した、とレイさんはしれっと答えた。「何食べてるの、紹介して」「牛の頭の、肉?」「美味しいの」「美味しいよ」「自由に好きなものを食べる、人生はこうでなくちゃ」「はは」「一口あげるよ、熱いから気をつけて」「うん、美味しいね」こんな会話を繰り返し、レイさんが完食するまでセフンはその場を離れなかった。全部は映ってないけれど、きっとたわいもない会話をしていたんだろう。たったそれだけのこと。私は幼い頃に口酸っぱく言われていた、亡き祖母からの"大切な人とは向かい合って食事をしなさい"という言葉を思い出していた。目を見て、表情を見て、会話をして、二人の時間を「一緒に」作ること。忙しいと理由をつけて蔑ろにされる食事の時間。大人になった今、その言葉の重さがわかったような気がした。

 

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一人で平気 嘘なら言える

言葉だったら どうとでも言える

共有する時間といえば、レイさんとセフンはよくコンサート前にこうやってひなたぼっこのようなことをしている。以前SNSにこの二人の様子が動画でアップロードされたことがあるが、真剣に話しているわけでもないし携帯を扱っているわけでもない。本当に、何もしていないのだ。片方が口を開けば、片方が笑う。何もないけれど、こうしてのんびりしている。新しく作った曲のこと、コンサートが終わった後の晩ご飯のこと、今ハマっているゲームのこと。そんなことをぽつりぽつりと話す。話題がなければお互いが無言を貫く。でもきっと、二人にとっての沈黙は沈黙であって、沈黙でないのだろうと思う。何も語らないけれど、側にいてくれる。隣に誰かがいることでその寂しい沈黙は「孤独」から抜け出すことができる。ふとした溜息だって欠伸だって、全部隣にいるその人が拾ってくれる。気を許すなんて言葉では大きすぎる括りかもしれないが、お互いを知ろうと色々やってみた。結果、こうなった。と考えると、とっても良い関係だ。そう思った。

 

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気持ちが見えたならいいのにな

いややっぱりいらないや 残酷だから

「EXOの中で一番かっこいいと思うのは?」「うーん、セフンかな」「グループの中で一番のイケメンは?」「セフンですかね」「レイさんから見て、かっこいいと思うメンバーは?」「皆かっこいいけど、代表として挙げるならセフンです」  昔からずっと、あの子は素敵だ完璧だとセフンの名前を連呼してきたレイさん。先程セフンがレイさんのことをイーシンと呼んでいたと記述したが、きっとデビューが決まってEXOとして表舞台に出た時からずっと、異国の人であり3歳年上であるレイさんのことを彼は良い意味で"対等に"見ていたのだと思う。何をするにしても言葉の壁がある。「あいつあんまり喋らないしさ」「どうせこっちが言ってることもわかんないんだろ」練習生のうちは少なからずそう思っていた人もいたはず。以前レイさんのインタビューを訳した時、過去の自分に手紙を書いたものの中に「君はいつも一人でいるね、親切な人は報われると信じて」「そしていつも良い人でいたいと思ってる、その心が本当の友人や兄弟を生むと信じて」とあった。言葉のせいでどれほど悔しい思いをしたか、どれほど寂しかったか、私にはわからない。だけど今レイさんがEXOの活動に参加していないにも関わらず、彼の母国語である中国語で一生懸命にスピーチをこなしているセフンを見ると、私はふとした時の二人が思い出されるのだ。

 

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自分の為に泣いたりしない

苦しい時も泣いたりしない

レイさんは弟達の中でも、特段セフンを可愛がっている。いや、可愛がっているというと語弊があるかもしれない。当然同じグループでも性格の合う合わないはあるし、得意苦手はあるだろう。だけどレイさんがセフンに向けるそれは何というか、特別なような気がするのだ。兄のふとした時の表情に「甘え」が見えた時、これは…と確信が持てた。以前セフンが雑誌か何かのインタビューで、年末に自分が声掛けをしてメンバー全員に集まってもらった、普段話せない色んなことを話して良い時間を過ごせたと語っていた。きっと、こういうところなのだ。レイさんは、セフンのこういうところが好きなのだ。この弟は皆の不満が爆発しそうな時、気持ちがバラバラになりそうな時「集まって話をしよう、ちゃんと聞くから」そう素直に言える人なのだ。相手に自分の気持ちを伝えるよりもまずは相手を理解しようとする、そんな人なのだ。中国人メンバーが皆脱退した後、母国語で会話できる人がいなくなってしまった。自分の考えや想いを伝える術を失ったレイさんを、伝えることを諦めようとしたレイさんを知ろうとしてくれたのはセフンなんじゃないか、そう思った。

 

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そんな君がさ なんで泣くのさ

僕より先に なんで泣くのさ

いつだったか、セフンがインスタに手の写真を載せていた。その写真には韓国語と中国語で一言。「辛い時は僕の手を握って。僕がいるから、怖がらないで」誰に向けたものかはわからない。だけどレイさんも見ていたであろうその投稿。8人のEXOが表舞台に立つ度に、1人のメンバーが忘れられていく。カムバも、CDリリースも、全部8人でやってのけた。コンサートも、番組出演も、全部全部8人だった。レイさんがいないEXOが当たり前になっていた。そんな時、セフンが皆にこの言葉をくれた。「力(ちから)」という魔法。見えないものだけど、それは確かに存在している。昔にも、こんなことがあった。

 

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言葉を選ばないのなら 傷つけて当たり前だ

後ろ向きで歩いてりゃつまずいたって当たり前だ

それは2013年の8月に遡る。大先輩であるSuperJuniorのラジオ放送「Kiss The Radio」通称:シュキラにお呼ばれした時の話だ。セフンがメンバー皆に宛てた手紙を音読するという昭和チックなコーナーがあり、照れ臭そうに一人一人に心を込めて読んでいた。時間内には全てを紹介できなかったため、放送終了後にその手紙の全文が公開された。

 

可愛いレイヒョンへ

僕はいつだって、ヒョンを信じてるよ

だから自分が正しいと思う道に進んでほしい

最近色んなことを話したけど

あまりにも弱気になってるみたいだったから(笑)

辛い時は僕を探してみてください

愛してるよ

 

今年のインタビューで明らかになったレイさんの本音。実は自分に自信が持てなかったと、これで良いのか、これが正解なのかとずっと疑ってきたと語った。デビューする前からその不安と一緒にここまでやってきたと。自分の弱さを認めなければ、強くならなければ。そのための努力は惜しまない。だけど、口で言うほど簡単なことじゃない。悩みは尽きなかった。そんな時、自分を嫌いになりそうな時、レイさんの代わりにレイさんを信じてくれたのは同じメンバーの末っ子だった。「僕は兄さんを信じてるよ」この言葉にどれほど救われたか。もしかするとこの時、個人事務所の話もしていたかもしれない。EXOでありたいという気持ちと、母国で認められたいという気持ち。どちらも捨てることはできない、どうしたらいいのか、どちらが正解なのか、そんなことをセフンに話していたのかもしれない。そうするとこの手紙にも納得がいく。前へ引っ張っていくというよりは、後ろからそっと押してあげる優しさ。それを持っている弟に励まされて、自分を好きになる努力をした。認めてもらうために努力をした。そしてそれを側で見守ってきたのも、やはり弟なのである。

 

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だから僕はもう  自分の為に生きたりしない

誰かの為に笑ってみたい

2015年にも彼はメンバーに手紙をしたため、それを番組で音読させられている。「今ここにいないけど、この放送を絶対みるからねといったレイヒョン」始まりはこうだ。この一文からもわかるように、お互い忙しいなりには連絡を取り合っているらしい。僕が何分何秒に何て言ったか確認するからね、とふざけながらも締めくくりは「怪我に気をつけて、健康でいてね」だった。「会いたい」とは、言わなかった。それは兄の努力を知っている弟からの精一杯の激励だった。自分らしくやって、自分だけの輝きを見つけてほしい。そしていつか、EXOに戻ってくる日を待っている。ウォーアイニーに込められた言葉の本当の意味は、レイさんだけが知っていれば良い。

 

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君と笑った 季節が終わる 

時は流れる たったそれだけ

可愛い可愛いオセフン。長くなりましたが24歳の誕生日おめでとう。何よりも健康第一。事故や怪我に縁がない人生でありますように。ずっとずっと、変わらないEXOの末っ子。その優しい心を持ったまま、かっこいいおじさんになってくれ。そして兄の良き理解者であり続けてほしいと願うばかりです。やっぱりというか、案の定というか、レイさんのペンミへの不参加が決まったみたいだけど、そんなことにめげない。しょげない。泣いちゃダメ!頑張れレイペン。強く生きよう。

 

 

 

自分の声や行動が誰かのためになること、リタ(利他)というらしいです。自分よりも、人の幸せを願うこと。この行為に名前がついていることに驚いた。EXOとは全然関係なくて申し訳ないのですが、これを聞いた時になんだか切ない気持ちになったので、BGMで流してみたら筆が進みました。←

このブログの最初からずっと赤文字で書いている詩、amazarashiの「リタ」という曲です。

興味のある方は是非どうぞ!